先日お客さまの出張カットに行ってきた。
『こちらに出向いて頂き、妻のカットして欲しい』と出張カットの予約電話を頂いたから。
その方の奥さまは、僕と同じ年齢。24歳OL頃から四谷三丁目にあるヘアーディメンション、
青山にあるヘアーディメンションと、ずっと僕のところに通い続けてくださったお客さまで
33歳のころ、ご結婚をされアメリカへ永住をしたが、
日本に帰ってくる度、アルティファータにも通ってきてくださっていた。
僕は出張のカットはしていない。
事情を聞くとそのお客さまは末期がんに侵され、余命1週間とのこと。
髪の毛は薬の副作用でボロボロ。だんなさまが髪を切ってあげようとすると
『CHIKAさんのところに行って切ってもらうんだから、いじらないで』といわれ電話をくれたのだ。
病院から離れることが出来ない。
注射をしなければ目を覚ますこともない状態という。
僕は「必ずカットさせてください。」と約束をする。
本人には知らされていない数日後、シザー道具一式もって病院に行く。ごく自然な感じで。
「撮影が近くであったので来ました!」
お客さまの身体には何本もの管が通され、顔にも固定するテープだらけ。
同じ部屋では6ヶ月ぐらいのお子さんを抱くおばあちゃんと
3歳のお兄ちゃんが無邪気に遊んでいる姿があった。
『CHIKAさーん。忙しいのに。わざわざ来てくださってありがとうございます。』
体に負担をかけないようにわずか10分ほどでカットをさせてもらった。
手鏡をみて
『きれいにしてもらって嬉しいわ。銀座にでも美味しいものを食べに行きたくなるわね。』
と喜んでくれた。
僕は『今度はカラーをしましょう。サロンでお待ちしてますね。』と最後の挨拶をする。
その時、返してくれた笑顔は絶対に一生、忘れない。
祈り叶わず、数日後に亡くなられたことを連絡頂く。
僕はお客さまの友人ではない。
美容師でなければ、あの日お会いさせていただくこともなかったであろう。
また最後に美しくして差し上げることも出来なかったであろう。
このお客さまは来店いただいているときから、僕が元気をもらうような人だった。
最後僕がカットをしに行ったときも、本当はすべてをわかっていて
最後の励ましをしてくれたのかもしれない。
いい美容師になりなさいって。
人としての強さ、前向きさ、みなの心使いを
すべて受け止めての振る舞いだったのだとおもう。
僕はそんな本物の人間「美容師」にならなきゃいけない。
美容師はお客さまの人生とともに生きる素晴らしい仕事なんだよ。
皆も自覚と誇りと責任をもって働こう。
■これはオープンして間もない時の出来事
美容師の原点を再確認した出来事だった。
その1年ぐらいたった時、ご友人から
だんなさんが「奥さまのようにみんなの役に立てる人に」と
お子さんを育てていらっしゃると聞いた。






