ジョン・レノンが暗殺される数時間前に撮影された、ヌードのジョンがオノ・ヨーコに抱きつく写真。バニティーフェアー誌の表紙を飾って話題となったデミ・ムーアのマタニティー・ヌード。ポートレート写真家、アニー・リーボビッツの作品は、国境を越え世代を超え、強烈な印象を人々の胸に焼き付けてきた。
米国空軍に勤める父とモダン・ダンサーの母との間に生まれ、父親の仕事の関係で全米各地を転々として暮らす。
学生時代はアンリ・カルティエ=ブレッソンに影響を受け、サンフランシスコ・アート・インスティチュートで絵画を学ぶが、作業研究で暮らしたイスラエルで写真を撮影したことが転機となる。
ローリングストーン誌にイスラエル反戦運動が掲載されたのをきっかけに、初めてジョン・レノンの撮影を行ったのは1970年、彼女がまだ20歳のころのこと。1975年のローリングストーンズのツアー・ドキュメントの仕事で一躍有名となり、1980年にはジョンとオノ・ヨーコの作品でローリングストーン誌の表紙を飾り、世界中の人々に知られることとなった。
それまではルポルタージュ的な作品が中心であったが、80年代には、よりコンセプチュアルなイメージ写真を生み出すようになる。
ミック・ジャガー、レイ・チャールズ、ブラッド・ピット、ヒラリー・クリントン、デミ・ムーア、そしてエリザベス女王やジョージ・ブッシュ大統領・・・。
固定概念をやすやすと破壊し、常に斬新なイメージを創造して話題を集める彼女の作品は数々のセレブリティを魅了する。彼女に撮影されるためならどんなに忙しくてもスケジュールを空けるという著名人も後を絶たない。
その後『写真論』で知られる女性作家のスーザン・ソンタグに出会い、彼女の影響で、再びルポルタージュ写真家としてサラエボに向かい、華やかなセレブリティのコマーシャル写真とは一線を画す戦場写真を撮影する。
一方、彼女が愛してやまない家族やパートナーを撮影したあたたかなプライベート写真には、コマーシャル写真とはまた違う、彼女らしい新たな魅力が表現されている。
その溢れんばかりの豊かな感性、30年以上にわたり第一線で活躍を続けてなお、新しい衰えることを知らない写真への情熱。2月に公開される自らのドキュメンタリー映画『アニー・リーボビッツ』のなかで、「死にゆくその日も撮影をしていたい」と話す彼女のありあまるバイタリティーが、彼女にしか撮れない斬新な作品となって人々の心を捉えている。自らのファッションや見た目ではなく、生涯をかけて作品の美を求め続ける。アニー・リーボビッツもまた、類まれなビューティスタのひとりなのだ。